猫が水を飲まない時の工夫とは？脱水を防ぐ飲ませ方とおすすめ自動給水器

愛猫がなかなか水を飲んでくれない。

お皿の水が全然減っていないと、本当に心配になりますよね。

「脱水症状になったらどうしよう」

「病気の前兆なのかな？」

そんな不安を抱えている飼い主さんは、実はとても多いんです。

猫はもともと砂漠で暮らしていた生き物だから、水をガブガブ飲む習慣があまりありません。

でも、現代の家猫生活では、腎臓病や尿路結石を防ぐためにも、水分補給は超重要！

そこで今回は、私が実践して効果があった「猫に水を飲ませる工夫」と、話題の「自動給水器」について徹底解説します。

今日から試せる方法ばかりなので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

猫が水を飲まないのはなぜ？本能とこだわりの理由

まず最初に、「どうして猫は水をあまり飲まないのか」を知ることから始めましょう。

理由がわかれば、対策も見えてきます。

単なるワガママではなく、猫なりの深い事情があるんですよ。

祖先からの遺伝？砂漠出身の生存本能

猫の祖先であるリビアヤマネコは、砂漠地帯で暮らしていました。

水が貴重な環境で生き抜くために、彼らの体は「少ない水分でも効率よく使えるシステム」に進化しています。

そのため、喉の渇きに対して少し鈍感なところがあるんですね。

犬のように「ハァハァ」と舌を出して体温調節をすることも少ないので、水を飲む動機が生まれにくい生き物なのです。

また、野生時代は狩った獲物の肉から水分を摂取していました。

生肉には約70〜80％の水分が含まれています。

つまり、「水を飲む」という行為そのものが、彼らにとっては補助的なものだったのかもしれません。

しかし、現代の主食であるドライフード（カリカリ）の水分量はわずか10％以下。

これでは意識して水を飲まないと、慢性的な水分不足になってしまいます。

繊細すぎる！猫の「水へのこだわり」

猫は私たちが思っている以上に、環境に対してデリケートです。

「水が気に入らない」という理由だけで、断固として飲まないことがあります。

例えば、以下のようなことがストレスになっているかもしれません。

ヒゲが当たるのが嫌猫のヒゲは超高感度センサーです。器の縁にヒゲが当たると「ヒゲ疲れ（ウィスカー・ストレス）」を感じて嫌がることがあります。
カルキ臭が気になる水道水の消毒に使われる塩素（カルキ）のにおいを嫌う子は多いです。人間には気にならないレベルでも、嗅覚が鋭い猫には「臭い水」認定されているかも。
場所が落ち着かないトイレの近くや、人の通りが多い場所に水飲み場がありませんか？無防備になる瞬間だからこそ、安心できる場所でないと口をつけません。

このように、猫が水を飲まない背景には「本能的な鈍感さ」と「環境へのこだわり」が複雑に絡み合っているのです。

この章のまとめ
- 猫は砂漠出身なので、喉の渇きに鈍感な性質がある。
- 野生時代は獲物から水分を摂っていたため、水を飲む習慣が薄い。
- ドライフード主体の生活では、意識的な水分補給が必須。
- ヒゲが器に当たるストレスや、水のニオイに敏感。
- 落ち着かない場所にある水は、警戒して飲まないことがある。

飲まないとどうなる？知っておくべき脱水と病気のリスク

「今は元気そうだし、まあいいか」と楽観視するのは少し危険かもしれません。

水分不足が続くと、猫の体には静かに、でも確実にダメージが蓄積されていきます。

ここでは、水分不足が引き起こす具体的なリスクについてお話しします。

腎臓と膀胱への負担が大！尿路系のトラブル

猫の死因の上位に必ず入るのが「慢性腎臓病」です。

水分摂取が少ないと、尿が濃くなります。

濃い尿を作り続けることは、腎臓にとって重労働となり、負担をかけ続けてしまうのです。

また、尿が濃くなると、尿中のミネラル成分が結晶化しやすくなります。

これが集まって石のようになったものが「尿路結石」です。

膀胱炎尿の量が減り、排尿回数が減ると、膀胱内に細菌が繁殖しやすくなります。特に特発性膀胱炎は、ストレスや水分の少なさが原因の一つと言われています。
尿道閉塞結石や炎症物質が尿道に詰まってしまう状態です。オシッコが出なくなると、尿毒症を引き起こし、短時間で命に関わる緊急事態になります。特に男の子の猫ちゃんは尿道が細いので注意が必要です。

これらを防ぐ一番の特効薬こそが、「たっぷりの水」なんです。

オシッコを薄く保ち、頻繁に排泄することで、悪いものを体外へ洗い流すイメージですね。

隠れ脱水を見抜く！お家でできるチェック方法

猫は不調を隠す天才です。

「なんとなく元気がない」と思った時には、すでに脱水が進んでいることも。

日頃から、飼い主さんが脱水のサインを見逃さないようにチェックしましょう。

お家で簡単にできるチェック方法は以下の通りです。

チェック方法	手順	正常な状態	脱水のサイン
スキンデント	背中の皮膚を軽くつまんで持ち上げ、パッと離す。	すぐに元の状態に戻る。	皮膚が戻るのに時間がかかる。テント状に残る。
歯茎チェック	指で優しく歯茎に触れてみる。	ヌルッとしていて湿り気がある。	ペタペタ張り付く感じや、乾いている。
おしっこ	トイレの回数や量を確認する。	1日2〜3回以上、しっかりした量が出ている。	回数が減る、1回の量が極端に少ない、色が濃い。

特に夏場や、暖房が効いた冬の部屋では「隠れ脱水」になりやすいです。

定期的に背中をつまんで、皮膚の戻り具合を確認するクセをつけると良いですよ。

この章のまとめ
- 水分不足は、宿命的な病気である「慢性腎臓病」のリスクを高める。
- 尿が濃くなると結石ができやすく、膀胱炎や尿道閉塞の原因になる。
- オシッコをたくさんさせて、膀胱内を洗い流すことが重要。
- 背中の皮をつまむ「スキンデント」で脱水チェックができる。
- 歯茎の乾きや、トイレの回数減少は危険信号。

今すぐできる！水を飲ませるための「食事」の工夫

環境を変えるのも大切ですが、まずは毎日の食事タイムに一工夫加えるのが手っ取り早いです。

「水を飲みなさい！」と言っても通じませんが、食事とセットなら自然と水分を摂ってくれることが多いですからね。

我が家でも実践している、効果的なテクニックを紹介します。

ウェットフード活用術と「ちょい足し」ワザ

一番確実なのは、主食の一部をウェットフードに変えることです。

ウェットフードの水分量は約80％。

これを食べるだけで、かなりの水分補給になります。

「でも、うちはカリカリ派でウェットを食べない…」

「コストがかかるから毎日はちょっと…」

そんな場合は、以下の方法を試してみてください。

カリカリをふやかすドライフードにぬるま湯をかけて、少しふやかします。香りが立って食欲をそそる効果もありますが、食感の変化を嫌う子もいるので、最初は数粒から試しましょう。
トッピング作戦カリカリの上に、スープタイプのウェットフードや、猫用のカツオ節の煮汁をかけます。水分と一緒に旨味成分を摂取できるので、喜んで舐めとってくれることが多いです。
おやつを水分リッチに「ちゅ〜る」などのペースト状おやつをあげる際、そのまま袋からあげるのではなく、小皿に出して水で少し薄めます。「ちゅ〜る水」なんて呼ばれていますが、味が好きなら薄まっていても喜んで飲んでくれますよ。

温度と風味で誘惑する！「味付き水」の魔法

ただの水道水に飽きているなら、水そのものを美味しくしてしまいましょう。

猫にも味の好みや、温度の好みがあります。

ぬるま湯を用意する猫の舌は、獲物の体温に近い「38度前後」を好むと言われています。特に寒い冬の朝などは、冷たい水よりも人肌程度のぬるま湯の方が、飲みつきが良いことが多いです。
鶏のゆで汁（塩分なし）ササミや鶏胸肉を茹でた時の「ゆで汁」を冷ましてあげてみてください。お肉の香りがついた水は、猫にとって最高のご馳走ドリンクになります。※もちろん、人間用の調味料は一切入れないでくださいね。
氷を浮かべてみる逆に、夏場などは氷を1つポンと水飲み場に入れてみてください。カランコロンという音や、冷たい感触に興味を持って、遊びながら水を飲んでくれることがあります。

「水＝ただの水分」ではなく、「水＝美味しいもの、楽しいもの」と認識を変えてあげることがポイントです。

この章のまとめ
- ウェットフードを取り入れるのが最も効率的な水分補給。
- カリカリにぬるま湯やスープを足す「トッピング作戦」が有効。
- ペーストおやつを水で溶いた「ちゅ〜る水」は最強の武器になる。
- 水の温度を人肌（38度くらい）にすると飲む量が増えることがある。
- 鶏のゆで汁など、香りのついた水で嗅覚を刺激する。

置き場所と器を変えるだけ？環境づくりのプロ技

「何をあげても飲まない」と嘆く前に、水飲み場の環境を見直してみましょう。

実は、水そのものではなく「器」や「場所」が気に入らないだけ、というケースが非常に多いんです。

猫の気持ちになって、理想のドリンクバーを作ってみましょう。

猫が飲みたくなる「器」の選び方

前述したように、猫は「ヒゲ疲れ」を嫌います。

おしゃれな器でも、猫にとって飲みづらければ意味がありません。

器選びの鉄則は以下の3点です。

口が広いもの顔を突っ込んでも、ヒゲが器の縁に当たらないような、広口のボウルを選びましょう。ラーメン鉢くらいの広さがあると理想的です。
高さがあるもの床に直置きだと、猫は首を深く下げて飲むことになり、食道に負担がかかります。特にシニア猫には辛い姿勢です。脚付きの食器や、台を使って高さを出してあげると、楽な姿勢でゴクゴク飲めます。
素材にこだわるプラスチック製の器は、細かな傷に雑菌が繁殖しやすく、ニオイが残りやすいです。おすすめは「陶器」か「ガラス」、あるいは「ステンレス」です。特に陶器（セラミック）は水の味がまろやかになるとも言われ、好む猫ちゃんが多いですよ。

家中にオアシスを！配置のゴールデンルール

「水飲み場はご飯の横」と決めていませんか？

実は、野生の本能では「食事場所（死骸がある場所）の近くの水は汚れている可能性がある」と判断し、避ける傾向があるとも言われています。

（もちろん、気にしない子もいますが！）

飲水量を増やすための配置テクニックは、「動線上に複数を置く」ことです。

各部屋に1つ設置リビング、寝室、廊下の隅など、猫がよく通るルート上に水を置いておきます。「あ、水だ。ちょっと飲もうかな」と、通りがかりに飲めるチャンスを増やすのです。
静かな場所を選ぶ洗濯機の横やテレビの真ん前など、音がうるさい場所はNG。壁際や部屋の隅など、背後を取られない安心できる場所を選んであげましょう。
高さの変化をつける床だけでなく、出窓の上やキャットタワーの途中など、高い位置に置いてみるのも効果的。高い場所が好きな猫にとっては、そこが一番の特等席になるかもしれません。

器の数だけ、飲むチャンスが増えると思ってください。

管理は少し大変になりますが、愛猫の健康には代えられませんよね。

この章のまとめ
- ヒゲが当たらない「口の広い器」を選ぶのが鉄則。
- 脚付き食器や台を使って、首に負担がかからない高さにする。
- 雑菌が繁殖しにくくニオイが移らない陶器やガラス製がおすすめ。
- ご飯の横だけでなく、家中の動線上に複数の水飲み場を作る。
- 静かな場所や高い場所など、猫が安心できるポイントを探す。

最終兵器！自動給水器のメリットと選び方

器や場所を変えてもダメなら、文明の利器「自動給水器（ファウンテン）」の出番です。

流れる水に魅了される猫ちゃんは本当に多いですよね。

蛇口から滴る水が好きな子には、特におすすめです。

導入を迷っている方のために、メリットと選び方のポイントを解説します。

なぜ人気？流れる水が猫を惹きつける理由

「どうしてわざわざ電気を使って水を流すの？」と思うかもしれませんが、これにも野生の本能が関係しています。

自然界では、

「流れている水＝新鮮で安全」

「溜まっている水（水たまり）＝腐敗して危険」

という認識があります。

チョロチョロと水が湧き出る動きや音は、猫の「新鮮な水だ！」という本能を刺激するのです。

また、水面が揺れていることで、水があることを視覚的に認識しやすいというメリットもあります。

（猫は静止している透明な水を見るのが少し苦手なんです。）

実際、自動給水器に変えた途端、飲む量が倍増したという話はよく聞きます。

フィルターを通して循環濾過しているので、ホコリや抜け毛が除去され、常に綺麗な水が飲めるのも嬉しいポイントですね。

失敗しない選び方とメンテナンスの注意点

いざ買おうとすると種類が多すぎて迷ってしまいますよね。

選ぶときにチェックすべきポイントをリストアップしました。

静音性モーター音がうるさいと、猫が怖がって近づきません。「超静音」を謳っているものや、ポンプが水中に浮いている構造のものを選びましょう。
洗いやすさ（超重要！）自動給水器最大のデメリットは「洗うのが面倒」なこと。パーツが複雑だと、掃除がおっくうになり、カビが生える原因になります。構造がシンプルで、凹凸が少なく、パーツを分解して丸洗いできるものがベストです。最近はコードレスポンプを採用した、洗いやすいモデルも出ていますよ。
フィルターのランニングコスト専用フィルターの定期交換が必要です。本体が安くても、フィルターが高すぎたり、入手しにくかったりすると続けられません。購入前に消耗品の価格もチェックしておきましょう。

注意点：

自動給水器は「水を継ぎ足すだけでOK」ではありません！

夏場は特に、ポンプ内部やタンクにヌメリ（バイオフィルム）が発生しやすいです。

最低でも週に1〜2回は全パーツを分解洗浄し、水は毎日交換するのが理想です。

ズボラな管理だと、かえって不衛生な水を飲ませることになるので注意してくださいね。

この章のまとめ
- 「流れる水＝新鮮」という本能を刺激し、飲水量が激増することがある。
- フィルター循環により、ホコリや毛が浮いていない綺麗な水を保てる。
- モーター音が静かなものを選ばないと、怖がって使わない可能性がある。
- 構造がシンプルで分解洗浄しやすいモデルを選ぶのが長く使うコツ。
- メンテナンスをサボるとカビやヌメリの原因になるので、こまめな掃除が必須。

これって病気？病院へ行くべき危険なサイン

ここまで「飲ませる工夫」をお伝えしてきましたが、最後に一つだけ大切な注意点があります。

それは、「猫が水を飲まない原因が、病気による体調不良かもしれない」ということです。

単なる好き嫌いと、病気のサインを見分けるポイントを知っておきましょう。

急な変化は要注意！見逃してはいけないシグナル

「今まで普通に飲んでいたのに、急に全く飲まなくなった」

という場合は、緊急性が高いかもしれません。

口内炎や歯周病で口が痛くて飲めない、あるいは内臓の不調で吐き気がして飲めない可能性があります。

逆に、「急に水をガブガブ飲み始めた」場合も要注意です。

これは「多飲多尿」と言って、慢性腎臓病や糖尿病、甲状腺機能亢進症などの典型的な症状です。

体重1kgあたり50ml以上これを目安にしてください。例えば4kgの猫ちゃんなら、1日に200ml以上飲んでいる場合は「飲み過ぎ（多飲）」の疑いがあります。

こんな様子ならすぐに動物病院へ

以下の症状が合わせて見られる場合は、様子を見ずに動物病院へ相談してください。

食欲廃絶水だけでなく、大好きなご飯やおやつも食べない。
嘔吐・下痢水を飲んでは吐く、あるいは何も胃に入っていないのに吐いている。
うずくまって動かない暗い場所や狭い場所に隠れて、じっとしている。
おしっこが出ないトイレに行くのに何も出ない、あるいはポタポタとしか出ない。（これは数時間で命に関わる緊急事態です！）

猫の体調変化はスピード勝負です。

「工夫しても飲まないし、なんだかぐったりしている」と感じたら、迷わずプロの判断を仰ぎましょう。

この章のまとめ
- 急に飲まなくなったり、逆に飲みすぎたりする「変化」に注目する。
- 口内炎などの痛みで飲めないケースもある。
- 体重1kgあたり50mlを超える飲水は「多飲」として病気を疑う。
- 食欲不振、嘔吐、排尿困難を伴う場合は、緊急で動物病院へ。
- 日頃の観察こそが、愛猫の異変に気づく一番の手段。